top of page

​ようこそCRS-R研究会へ

​本WEBサイトは、意識障害の国際的な標準評価であるComa Recovery Scale-Revised (CRS-R) が日本でも広く認識され、意識障害患者の診療や研究の発展に貢献することを目的としています。

意識障害の重症度分類

​当HPを初めて訪問された方にとって、意識障害の重症度分類は初めて耳にする単語が多いかもしれません。しかし、意識障害を理解する上では必要不可欠な知識ですので、ぜひこの機会に覚えていただければ幸いです。

さて、意識障害は重症から軽症の順番に、大きく以下の5つに分類されます。

  1. 昏睡:Coma

  2. 無反応覚醒症候群:Unresponsive Wakefulness Syndrome (UWS) 

  3. 最小意識状態マイナス:Minimally Conscious State Minus (MCS-)

  4. 最小意識状態プラス:Minimally Conscious State  Plus (MCS+)

  5. 最小意識状態からの脱却:Emergence from Minimally Conscious State (EMCS)

​上記の意識障害は、どのような基準に従って分類されるのでしょうか?

スライド6.JPG

Coma Recovery Scale-Revisedを使用すれば、意識障害を分類できる

スライド7.JPG

上記の表は、CRS-Rを簡略化して表したものです。6つの下位項目にそれぞれ色分けがされています。CRS-Rの6項目を全て採点した後に、意識障害の重症度分類を確認します。

  1. EMCS:黄色の項目を1つ以上得点した場合

  2. MCS+:EMCSの基準が得点できないが、緑色の項目が1つ以上得点した場合

  3. MCS-:EMCS、MCS+の基準が得点できないが、赤色の項目が1つ以上得点できた場合

  4. UWS:EMCS、MCS+、MCS-の基準が得点できない場合

ここで重要なのは、覚醒項目の得点が意識障害の重症度に関係しないことです。閉眼していても意思表示できる方は、EMCSと判断される可能性があります。これはJCSやGCSとの大きな違いです。

従来の評価の問題点

一般的に、日本での意識の評価は、JCSやGCSが使われます。

しかし、JCSやGCSを用いると、明らかに異なる意識レベルの患者が同じスコアで表現されることがあり、その結果意識障害の変化を捉えられない場合があります。

例えば、左の患者のように、持続開眼しても追視が不可能で、発語が無く、従命が不可能な左側の患者が「JCSⅠ-3」と評価されます。

同じ患者が、経過の中で右のように追視が可能となり、簡単な会話が可能、簡単な従命が可能となったとしても、名前や生年月日が言えない場合、『JCSはⅠ-3』のままです。

これでは『意識障害の改善』を正確に表現することができません。

CRS-Rがあることによって、何が変わるのか?

CRS-Rがあることによって、「意識あり」「意識障害あり」「意識障害の改善」を明確に表現できるようになります。これらは「そんなことは当たり前では?」と感じられるかもしれませんが、実は従来の評価では難しかったのです。

 意識がある者:MCS-、MCS+、EMCSの患者

 意識がない者:Coma、UWSの患者

 意識障害のある患者:Coma、UWS、MCS-、MCS+の患者

スライド10.JPG

CRS-Rを使用しないと、意識障害を誤って診断する可能性がある

意識をCRS-Rで評価する必要性について、重要な論文を紹介します。

この論文では、医療チームの臨床的コンセンサスによってUWSと診断された44名の患者に対して、CRS-Rを用いて意識レベルを再評価したところ、41%の患者がMCSと判定されたと報告しています。

つまり、CRS-Rを使わない場合「意識のある患者」を「意識が無い」と誤診していたのです。

米国では、多くの医療保険者が「意識が無い患者」すなわち「UWSの患者」の回復期リハビリテーション病院への入院を制限しているため、この誤診は患者に大きな影響を与えます。

日本は米国ほど誤診の影響は大きくないと考えられます。しかし、CRS-Rを使わない場合、先行研究と同様に意識障害を誤って認識し、患者の意識の改善を見逃す可能性が高まります。そのため、やはりCRS-Rを使って意識障害を評価することは重要です。

スライド12.JPG

意識障害に関する診断・分類・治療ガイドラインや研究の歴史的変遷

1970–1990年代:診断の枠組みの確立期

1972 年  The Diagnosis of Stupor and Coma(昏睡と昏迷の診断)初版。意識障害を病態生理学的に体系立てて診断する初の試み。

1991 年  Coma Recovery Scale(CRS)初版。神経反応性の微細な変化を検出するために設計された最初の標準化評価スケール。

1994 年  AAN(米国神経学会)コンセンサス声明。永続的植物状態(PVS)の診断・予後・治療に関する最新知見を整理(A)(B)

1995 年  

1996 年  英国が主導する「植物状態の管理に関する国際作業部会:要約報告書」が発行。植物状態患者の治療に関する国際的な合意形成。

2000年代:診断精度の向上と新しい分類

2002 年  Aspen WorkgroupによるMCS定義。「最小意識状態(Minimally Conscious State; MCS)」の診断基準を初めて明確化。「永久的植物状態(permanent VS)」という用語の使用を中止するよう提言。

2003 年 英国王立内科医協会(RCP)ガイドラインの改訂

2004 年 Coma Recovery Scale–Revised(CRS-R)発表。MCSの診断を目的に開発された、より精密な行動評価スケール。

2009 年 従来の意識障害の診断とCRS-Rによる診断には 約40%の誤差があることを推定

2010年代:新概念・新基準の登場

2010 年  

2011 年  MCSの細分類(MCS+ / MCS−)。言語機能の有無に基づくサブカテゴリーを導入。

2013 年  英国王立内科医協会(RCP)ガイドラインの改訂。「Prolonged DoC(遷延性意識障害)」という新たな用語を導入。終末期医療に関する倫理的・法的枠組みを提示。

2015 年  JAMA Neurology誌で「Cognitive Motor Dissociation」の概念が提唱。運動反応がないが認知活動がある状態(CMD)の概念が登場。

2018 年  AAN・ACRM・NIDILRR合同ガイドライン。PVSおよびMCSの最新定義と、長期DoC患者のケア推奨を更新。

2019 年  Curing Coma Campaign(CCC)開始。ComaやDoCの生物学的分類・臨床試験推進を目的とした国際的プロジェクト。

2020年代:国際的標準化と疫学研究

2020 年  

2022 年  第1回 国際昏睡疫学・評価・治療研究。CCCの調査で、昏睡の定義や評価技術の国際的不統一が明らかになった。

2023 年 CRS-Rの短縮版のCRSR-FASTが開発

2024 年 

Recent Posts

CRS-R研究会事務局

​​場所:浜松医療センターリハビリテーション科 

   CRS-R研究会 事務局

住所:〒432-8580 静岡県浜松市中央区富塚町328

メールアドレス:coma.recovery.scale@gmail.com

bottom of page