旧ホームページの自己紹介文からの転載
CRS-Rを公開した当時に書いた文章です。当時の想いを忘れないため、新しいホームページに引っ越し後も居場所を作らせていただきました。
私は今まで意識障害を伴う重症脳卒中患者さんのリハビリを担当していて、「JCSやGCSでは意識障害の変化を観察するには大雑把過ぎる」という想いがありました。
といいますのは、意識障害を伴う重症脳卒中患者さんを担当したときに、初期評価と中間・最終評価で患者さんの反応は明らかに良くなっているにもかかわらず、JCSやGCSでは評価結果が変わらないことがあるためです。
重症脳卒中患者さんは、車椅子に移乗するのも大変です。長下肢装具を使って立位練習を行い、場合によっては歩行も行うのですが、それはもう大変です。汗びっしょりになってリハビリしていて、主治医や看護師さんからは「(患者とPT)どっちのリハビリか分からないね(笑)」と言われるほどです。しかし、頑張ってリハを行うことで患者の表情や反応、身体機能の変化が感じられるのです。
意識障害の患者はほとんど指示が入らないため、実施可能な評価が限定されます。ブルンストロームもSIASも感覚も評価できません。その中で意識レベルの評価は患者の能動的な部分を示す重要な評価ですが、その意識の評価があまりに大雑把過ぎるため、リハによる患者の変化がスコアに反映されないのです。これが私にとっては本当に悔しかったのです!
Coma Recovery Scale-Revisedは意識レベルの軽微な変化を反映できることを目的に作られた評価であり、私にとっては「そう、これが欲しかった」といえるものでした。私がこの評価を知ったのは2019年でしたが、そのとき既に10か国を超える言語で翻訳されていたにも関わらず、日本では全く知られていないことに衝撃を受けました。原著者のジョセフ・T・ジャッチーノ教授に「私にCRS-Rを日本語に翻訳する許可をください」とメールしたことから始まり、大学教員でもない一理学療法士が行うには色々とハードルがありましたが、無事に日本語版を発表するに至りました。
CRS-Rの知名度は日本ではまだ低いですが、世界的には意識障害の評価におけるゴールドスタンダードとされており、いずれ日本でも当たり前のように使われると確信しています。特に、リハ職は意識障害の改善を目的に介入する立場であり、CRS-Rを積極的に使用すべきだと思います。
CRS-Rを使うことで意識障害患者の意識の変化が評価しやすくなるため、ぜひ評価表をダウンロードして使ってみてください。